体重計の数字がいつもと同じだと、少し安心しますね。
でも最近、後ろ姿がほっそりした気がする。立ち上がるとき、前より少し時間がかかる。背中をなでたときの感触が、なんとなく違う。
そんな小さな変化にも、目を向けてみませんか。
体重は、筋肉や脂肪などを合わせた重さ。筋肉が減り、脂肪が増えると、数字には変化が表れにくいことがあります。
今日は、体重計だけでは見えない「うちのこの筋肉」のお話です。
「まだ若いから」のうちに、知っておきたいこと
2024年、犬1,273頭・猫1,096頭の体組成データを分析した研究が発表されました。体組成とは、筋肉や脂肪など、体をつくるものの内訳です。
この研究では、筋肉や臓器などを含む「除脂肪軟部組織量」が、犬では約6.3歳、猫では約4.5歳をピークに減少する傾向が見られました。一方、犬の脂肪量は約9.3歳まで増える傾向がありました。[1]
研究施設で暮らす犬猫のデータから推定した年齢なので、その子ごとの変化には幅があります。それでも、元気に見える成犬・成猫の時期から、体の中身に目を向けたいと思わせてくれる結果です。
若いうちの体つきや動き方を知っておく。それが、年齢を重ねたときの小さな変化に気づく手がかりになります。
ふっくらした子にも、筋肉のチェックを
脂肪のつき方を見る「ボディコンディションスコア(BCS)」と、筋肉の状態を見る「マッスルコンディションスコア(MCS)」。
動物病院で使うこの2つの指標は、それぞれ違うものを見ています。
WSAVA(世界小動物獣医師会)の資料でも、太っている犬に筋肉の減少が隠れていることが示されています。筋肉は、背骨の両脇や肩甲骨、頭、骨盤まわりなどを見て、触れて評価します。[2]
毛がふわふわの子は、見た目の変化に気づきにくいことも。
いつものなでなでの時間に、「背中の感触はどうかな」「腰まわり、前と違うかな」と、そっと手を添えてみる。
次の健診では、「体重と一緒に、筋肉の状態も見てもらえますか?」と聞いてみてください。触れる場所や見方を教えてもらうと、家での観察もしやすくなります。
ごはんを減らすとき、筋肉の材料まで減っていない?
「少し太ったから、ごはんを控えめに」
よくある調整ですが、同じごはんを減らすと、カロリーと一緒に、たんぱく質やビタミン、ミネラルの摂取量も減ります。
例えば、同じフードを100gから80gに減らせば、そこから摂るたんぱく質も20%減ります。
そこで考えたいのが、食べる量を調整しながら、必要な栄養をどう確保するかという視点です。
2023年の研究では、太りすぎの犬30頭を2群に分け、異なる食事で6か月間の減量を行いました。
2群の体重減少は同程度でしたが、たんぱく質・魚油・大豆胚芽を強化した食事の群では、開始時と比べて除脂肪量が維持され、体脂肪がより減りました。複数の成分を調整したメーカー研究で、食事全体の設計による結果として捉える必要があります。[3]
ここで大切にしたいのは、「何kg減ったか」と一緒に、「何が減ったか」も見ること。
減量が必要な子は、量の調整と、必要な栄養を確保できる食事選びをセットで考えたいですね。AAHA(米国動物病院協会)の栄養ガイドラインでも、大きくカロリーを制限するときには、栄養を強化した減量用の食事を勧めています。[4]
足りない栄養を、上手に補う
手作りごはんの子も、フードを食べている子も、まずは一日に実際に食べているものと量を振り返ってみましょう。おやつやトッピングも含めて記録すると、食事全体が見えてきます。
食事だけでは補いにくい栄養には、良質なサプリメントを活用する方法もあります。 食べられる量やカロリーに限りがある子では、必要な栄養を補うための選択肢になります。
選ぶときは、成分と含有量が明確で、製造や品質管理について確認できるものを。そして、その子の食事に何がどれだけ必要かを考えて取り入れたいですね。
フードやほかのサプリメントと成分が重なることもあるので、今与えているものをまとめて、獣医師と連携している、犬猫の栄養に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
食事の内容に加えて、体調や検査結果、服用しているお薬なども踏まえながら、その子に必要なものと量を一緒に考えてもらえると安心です。
動かなくなった理由にも、目を向けて
食事と一緒に見たいのが、毎日の動きです。
散歩の途中で立ち止まる。寝起きの一歩がゆっくりになった。以前は上っていた場所を避ける。
そんなときは、関節などの痛みが隠れていることもあります。AAHAの疼痛管理ガイドラインでは、飼い主が気づく行動の変化や、家庭で撮った動画が、痛みを評価する手がかりとして重視されています。[5]
「運動不足かな」と散歩を増やす前に、まずは動きにくさの理由を確認する。
そのうえで、その子が無理なく動ける量や方法を考える。筋肉を大切にするために、そんな順番も覚えておきたいところです。
その子の「癖」も、大切な手がかりに
歩き出すとき、最初に出す脚はどちらでしょう。おしっこのときは、いつも同じ脚を上げていますか。
毎日一緒にいると見慣れてしまう動きにも、その子らしい体の使い方があります。
犬には使いやすい脚の好みがあり、歩き始めや排尿時の左右差は研究でも調べられています。[6・7]
だからこそ知っておきたいのが、うちのこの「いつも」と、その変化。
以前は左右どちらの脚も上げていたのに、最近は片方だけ。脚を上げても、すぐに下ろすようになった。立ち上がるとき、同じ側へ体を傾けるようになった。
こうした様子は、体重のかけ方や動きやすさを確認する手がかりになります。排尿では、上げる脚と、地面について体を支える脚の両方を見てみてください。
もともとの好みや周囲の環境も関わるので、使う脚に加えて、姿勢や動作の滑らかさ、以前との違いを伝えると、診察の参考になります。
「この子は昔からこう」「最近、ここが変わった」。
その違いに気づけることも、毎日そばにいる私たちにできる、大切なケアの一つです。
うちのこの「いつも」と比べてみよう
体つきや動きの変化に気づくための観察メモです。気になったことは記録して、診察のときに伝えてみてください。
□ 背中や腰の骨が、以前よりわかりやすい
体重が同じでも、なでたときの感触に変化がないか。強く押したり、嫌がる場所を繰り返し触ったりせずに。
□ 後ろ姿や太ももが、以前より細く見える
同じ角度から撮った写真があると、変化を比べやすくなります。
□ 立ち上がりや歩き始めが、ゆっくりになった
短い動画を残しておくと、診察室では見せない普段の様子も共有できます。
□ 脚の使い方や、排尿時の姿勢が変わった
上げる脚、支える脚、姿勢を保つ時間など、その子の普段と比べてみましょう。
□ 散歩や遊び、段差の上り下りを避けるようになった
「いつから」「どんな場面で」をメモしておきましょう。
□ 食事を減らした、食べ残しが増えた
おやつも含め、実際に食べたものと量を数日分記録すると、栄養相談の助けになります。
これらは筋肉の減少に限らず、痛みやほかの不調でも見られる変化です。続くときや左右差が気になるときは、動物病院で確認してもらいましょう。
急に立てなくなった、強く痛がるときは、すぐに連絡してください。
体重計に乗った、そのあとに
次に体重を量ったら、その数字と一緒に、後ろ姿や歩き方も少し眺めてみませんか。
ごはんをおいしく食べて、好きな場所へ歩いていく。遊びたいときに体を動かして、帰ってきたら気持ちよく眠る。
そんな毎日を支える筋肉を、食事と暮らしの両方から大切にしていきたいですね。
Knotの分子栄養学講座をご受講の皆様からは、日々の食事や栄養についてのご相談を随時受け付けています。
「今の量でいいのかな」「何を補えばいいのだろう」。そんな疑問も、お気軽にご相談ください。
参考文献
[1]McGrath AP, et al.(2024)
Retrospective analysis of dual-energy x-ray absorptiometry data demonstrates body composition changes with age in dogs and cats. American Journal of Veterinary Research, 85(12).
犬猫の加齢に伴う体組成の変化を調べた研究。
doi:10.2460/ajvr.24.05.0132
[2]WSAVA
Muscle Condition Score — Dogs.
犬の筋肉の状態を評価するための資料。
WSAVA公式資料
[3]Pan Y, et al.(2023)
Effects of a therapeutic weight loss diet on weight loss and metabolic health in overweight and obese dogs. Journal of Animal Science, 101, skad183.
減量中の犬の体脂肪・除脂肪量などを比較した研究。
doi:10.1093/jas/skad183
[4]AAHA(2021)
Nutrition and Weight Management Guidelines for Dogs and Cats.
犬猫の栄養評価と体重管理に関するガイドライン。
doi:10.5326/JAAHA-MS-7232
[5]AAHA(2022)
Pain Management Guidelines for Dogs and Cats — Chronic Pain Assessment in Dogs.
家庭での行動観察や動画を活用した慢性痛の評価について。
AAHA公式ガイドライン
[6]
Stability of motor bias in the domestic dog, Canis familiaris.
犬の脚の使い方の左右差と、その安定性を調べた研究。
PubMed掲載情報
[7]
Male dog urination posture preference: A survey of owner observations.
飼い主の観察による、雄犬の排尿姿勢と上げる脚の好みに関する調査。
掲載誌の論文情報

Knot STAFF BLOGについて
KOKO|Knot主宰
人と犬の食事と栄養を軸に、商品選びや専門家を迎えた講座の企画を行っています。自身も、チワプーの男の子と豆柴の女の子のママ。2頭との暮らしや日々の学びを交えながら、毎日のごはんに生かせる知識と工夫をご紹介しています。